民法

◆科目概要

 公務員試験における民法と言えば、やはり「量の多さ」が大きな特徴です。その量の多さと複雑さ故に、勉強する前から民法が嫌いになる受験生がいるほど学習負担が大きい科目で、学習を避けたい衝動に駆られる気持ちは理解できます。

 ただ、現在、国家公務員一般職においては、民法が「総則及び物権」と「債権、親族及び相続」の2科目分出題されるという、専門試験においてかなり幅を利かせている状況です。そして、地方上級では、全国型で4問、関東型で6問、中部・北陸型で7問、必須解答です。

 要するに民法という科目は、国家一般・地方上級を併願する受験生にとって、学習を避けることのできない必修科目だということです。

 それでも時間が無いなど余裕の無い受験生は捨てるか十分に学習できないまま試験に臨んできますので、民法をじっくり学習した受験生は試験において他の受験生より大きなアドバンテージを得ることができるワケです。しっかり対策すれば他の受験生に差を付けることのできる「おいしい科目」。それが民法です。

 が、当然攻略にはかなりの時間を要します。量が多いのに加え、抵当権やら債権やら普段聞きなれない専門用語が飛び交うので、学習初期は他の法律科目では味わえない至高の苦痛を味わうことができます。しかし逃げてはいけません。差が付く科目とはそんなものです。

 公務員試験において、民法は他の法律科目とやや異なる様相を呈しています。

 民法の試験問題は、知識を問うものと具体的な事例について問うものの大きく2種類に分けることができます。知識を問うものについては、とにかく覚えればいいわけですから、それほど怖くありません。しかし事例問題というのは、出題者側からすればいくらでも複雑に作ることができるわけですから、それらに対応するには、十分に整理された知識と考える力が要求されるわけです。

 したがって公務員試験における民法という科目は、単に判例の結果を覚えているだけである程度戦える憲法や行政法とは異なり、考え方を「理解」することが要求されます。そういう点においては、民法は憲法や行政法やその他法律科目よりも、経済学の科目に性質が似ていると言えるかもしれません。

 以上のような点から民法は、初学者がいきなり過去問から学習するのは難しい、というか無謀過ぎる科目ですが、このように量が多い上に理解が必要な科目を攻略する上でまず大切なのは、「知識を整理すること」です。

 例えば憲法は、条文も少なく範囲もそれほど広くないので、過去問をただひたすら解くとい作業を続けることである程度自然に知識は整理されます。しかし、量は多いわ複雑だわという民法については、漫然と過去問を解き続けるだけでは知識の整理は困難であるため、理解本を利用して全体像を掴むと同時にしっかりと基礎を固めることが不可欠であると言えます。事例問題に対応する上で応用力が要求されるのは上で述べた通りですが、そのためにはこの基礎(土台)をしっかり構築する作業が民法では他の科目に比べ非常に重要であって、故に学習の導入時の対応と進め方で結果が大きく左右されることになります。

 長々と述べてきましたが、つまり何が言いたいかというと、独学において民法は非常にハードルが高い科目であるということです。恐らく公務員試験の専門科目の中でもトップクラスです。といっても、参考書や過去問集の選び方と使い方で十分独学での攻略が可能な科目であることは間違いありません。要は学習法です。

 その一方で、やはり民法に限っては、本を読むことによって知識を身につけるという作業に自信が無い、能動的な姿勢が大前提となる独学にあまり自信が持てない受験生は、正直言って予備校の利用という選択肢を考えざるを得ない科目です。プロの説明はやはり整理されており、耳で聞き、手を動かすことで、理解は進み知識は定着します。科目に応じて柔軟に予備校を活用することは、難関とされる公務員試験を突破する上で極めて有効な戦略です。

 いずれにしろ、所詮は公務員試験における民法です。司法試験ではありませんので、「限られた時間の中でいかに効率よく学ぶか」という公務員試験勉強における鉄則は、民法でも同じです。

 確かに民法は大変ですが、私たちの実生活に直接関係する身近な法律なので、言葉の意味が解り全体像が掴めてくれば、次第に楽しくなってきますよ。なお、「最後まで楽しくなかった」という方がいたとしても、クレームは受け付けません人それぞれですからね♪

 あと、楽しくなってきたとしても深みにはまらない程度に留めることを決して忘れてはいけません。量が多いんだから、「公務員試験における民法」を学ぶことに専念しましょう。


◆お勧め参考書

○郷原豊茂の民法まるごと講義生中継〈1〉総則・物権編(TAC出版/336ページ)


○郷原豊茂の民法まるごと講義生中継〈2〉債権編(TAC出版/388ページ)


 本書はTACによる講義をもとに刊行された講義調参考書で、「まるごと講義生中継」(以下まる生)シリーズの民法科目です。「まる生」シリーズの中でも民法科目は特に受験生の評価が高く、豊富で具体的な事例を用いた説明が秀逸です。今や独学者にとって必携の民法参考書と言えるでしょう。

 ただ、本書もあくまで「導入時に一気に読む」という使い方に留まります。本書だけで公務員試験における民法の問題が解けるようになる訳ではありませんので注意が必要です。問題載ってないですから。

 講義調の参考書は具体的なので頭にスムーズに入りやすい分、要点が端的にまとめられている訳ではないので「復習しにくい」という欠点を持っています。また本書は「民法的な考え方を身に付ける」といういわゆる理解本であるため、網羅性に欠けます(家族法編が掲載されていないなど)。

 というか、〈T〉総則・物権編と〈U〉債権編をあわせれば700ページ以上読むことになるため、1度読み終えたらなかなか再度読んで復習する気にはなりません。一度読み切ったらすぐに過去問集に移行しましょう。

 本書を使う上で最も大切なのは、既に述べたように「一気に読む」ということです。1日数ページずつダラダラ読むなどという使い方をすると、大切な時間をドブに捨てることになります。読みながら忘れていき、途中で飽きてウンザリします。

 したがって、「問題を解くという作業が伴う学習には苦痛を覚えないが、ただただ読むという作業に多大な苦痛を覚える。というか、ムリ。分厚くて最後まで2冊も読む自信ない。」という受験生は、まる生民法のことは忘れた方がいいかもしれません。というか、もう予備校行った方がいい。

 一方、この2冊を1週間以内に読むことができるのであれば、是非オススメです。イエロー本では3週間で読むとか書いてありますが、3週間もかけてしまうと全体像が見えないまま読み終えてしまうことになります。初学時に大切なことは「慣れること」はもちろんですが、「全体像を掴むこと」ですからね。


○伊藤真の民法入門 講義再現版(日本評論社/179ページ)


 ということで、「民法まる生なんて分厚い本読んでられるかタコ」などという戦闘民族な受験生にはコレ。初学者であっても、「民法のイメージと全体像を掴みたい」という目的を満たすのであれば、この「伊藤真の民法入門」で十分足りると言えます。

 200ページに満たない本書ですが、一通り重要論点を網羅し、用語解説も条文もきちんと載っているため、初学者にとっても抵抗なく理解できる内容となっています。気軽に読める入門書として最適です。

 要領の良い受験生であれば、本書をきちんと読んで民法をおおまかに掴んだ後、レジュメと問題が充実しているスー過去を何度も潰せば、公務員試験民法を攻略できることでしょう。

 いずれにしろ参考書だけじゃ民法で点取ることなんて常人じゃ到底ムリなので、学習は過去問演習が主であることは言うまでもないのですが、あとは受験生の資質や状況に応じてこれらおすすめ参考書を使い分けてください。


◆学習指針

 過去問は新スーパー過去問ゼミ(民法T・民法U)で間違いありません。民法の「スー過去」は民法Tと民法Uの2冊に分かれているため量の多さに抵抗を感じる受験生も多いようですが、「スー過去」のなかでも民法は特に出来がいいと評判です。要点のまとめ部分が非常に秀逸で、掲載されている過去問の質も解答解説のわかりやすさも抜群です。レジュメで整理し過去問で身に付ける。これ最強。

 一方、科目概要でしつこく述べた民法学習で重要となる理解本についてですが、「まるごと講義生中継」は、一度民法を学び、民法という科目の範囲の広さや複雑さに苦しめられた経験のある人間が読めば、確かに「とても理解しやすい」と感じることのできる内容です。

 しかし初学時はそもそも民法というものが全体として見えていないため、みんなが解り易いという本書を一番最初に読んでも、「それほど解り易いかな?」とか「分厚いだけで結局よくわかんねーのでは?」などとある種の疑心暗鬼に囚われるのも納得できます。

 そういう意味で、完全なる初学者の場合は、時間が許すのであれば、

 @「伊藤真の民法入門」で民法の用語を知るとともにおおまかな全体像を掴む(1日で読め!)

   ↓

 A「民法まる生」を読んで事例から見た具体的な民法を学ぶことで、基礎を固める(1週間で読め!)

   ↓

 B「スーパー過去問ゼミ」で演習。レジュメで復習しつつ、過去問演習で知識と考え方の定着を図る(最低3回は回すこと)

 の、3段構えが最適であるかと思われます。公務員試験対策室としてはムダに参考書をいくつも使うことは大反対なのですが、独学で民法を本当に攻略したいのであれば、これぐらいのことはやって然るべきだと思います。

 スー過去演習については、***問題は1周目は飛ばすなど、憲法や行政法の演習と同じく効率的に学習しましょう。正文化も自由ですが、記憶よりも理解を要求される事例問題については、答えを書き込まない方がいいかもしれません。

 ここまで記述したところで余談ですが、実は私自身は、スー過去民法の2冊という分量に抵抗を感じ、最初はイエロー本の教えにならって導入本の「まるごと講義生中継」を読み終えた後、実務教育出版の「基礎からステップ 民法」という本から入った訳です。

 ところが、各テーマごとに「基礎的知識解説」→「チェック例題1問」→「重要過去問1問」というプロセスで学習してゆくという本書(基礎からステップ)は、最初の基礎知識解説はまぁいいとして、1テーマにつき過去問演習が僅か2問という、圧倒的な演習量の足りなさ最高にダメー!な点だったのです。本書を1周した後の手ごたえの無さは記憶に強く残っております。「まぁ、まだ1週目だしな(苦笑)」と思い2周目を苦痛とともに終えた頃の感想は、「民法ムズイ」でした。模試でも点が取れませんでした。

 他の過去問にも手を出しながら、民法に苦手意識を覚えてきたところで、恐る恐るスー過去民法を手にしてみたところ、世界が変わりました。

 そもそも基礎知識というか全体像は、導入本である「まるごと講義生中継」を読んだことである程度頭に入っている訳ですから、次に必要なのは要点の確認と十分な過去問の演習です。レジュメで要点整理し、過去問で理解する、という基本スタンスは、分量の多い民法もやはり例外ではありません。

 そういう意味ではLEC出版のクイックマスター(民法(1)・民法(2))もなかなかいいのは事実です。が、実際に使ってみるとスー過去の方が無駄が無く難易度も適切で総合的に優れていることに気付くかと思います。特に解答解説は「クイマス」よりも「スー過去」の方がシンプルかつスマートです。

 民法の最短攻略ルートは、お勧め理解本→スー過去演習であること断言いたします。

 なお、民法は「私法の一般法」であると言われますが、憲法を除くほとんどの法律に共通して使われる基本的な用語や制度の概念は、その多くが民法に置かれています。つまり、民法を学習することは、その他多くの法律の基礎を学ぶことにつながります。

 したがって、民法は量が多いのはもちろんですが、法律的な考え方を身に付ける上で非常に重要な科目なので、公務員試験における専門科目の中でも、最も早い時期に学習を始めるべきです。覚える量も少なく全ての法律の基礎である憲法の学習がある程度落ち着いてから着手してもかまいませんが、民法を後回しにするのは非常に非効率なので、選択すると決めればすぐに学習を始めるよう心掛けてください。

 また、試験での出題範囲としては、公務員職種によってある程度傾向に差はあれどほぼ全分野から出題されます。したがって、つべこべ言わず過去問集をきちんと全部つぶすこと。親族・相続の分野手前で力尽きる受験生が例年いますが、結構試験で出るので注意するように。

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