専門記述

◆科目概要

 専門記述試験とは、行政科目、法律科目、経済科目といった各種専門科目ごとの複数の課題から、1題又は複数題選択して論述するという形式の記述試験を言います。行政系公務員試験では、国家総合職や国家専門職の財務専門官や国税専門官、裁判所事務官などの国家公務員試験で出題されるほか、地方自治体では東京都の専門記述が有名です。以下、国税専門官と東京都T類Bの行政(一般方式)(以下東京都)を例に見てゆきます。

 字数は概ね800字〜1200字程度。時間は、東京都は2時間、国税専門官で1時間20分です。時間的に見ても、3題で2時間の東京都より、1題で1時間20分の国税専門官の方がややレベルの高い記述が要求されると考えていいでしょう。

 東京都も国税専門官も専門記述は一次試験で課されます。しかし、一次試験の合否決定時に評定される東京都とは異なり、国税専門官では一次試験合格者を対象に評定(採点)された上で、最終合格者決定にあたり、他の試験種目の成績に統合されるようです。

 専門記述に要求されるのは、知識が全てです。課題に対して十分な字数と構成で解答が正確に記述されてさえいれば、満点を取れる訳です。

 が、裏を返せば、知識が無ければアウトです。いかに文章作成能力が長けていようとも、試験で与えられた課題に対する知識が無ければ、何も書けません。かつ、中途半端な知識でも、到底合格レベルの答案は書けません。

 したがって、教養論文以上に受験生間で点数差が付くのが、専門記述です。きちんと対策したかどうかで、モロに結果に響きます。

 特に、平成21年度から択一式の専門試験が無くなり、専門試験は記述式のみ3科目選択となった東京都の試験においては、専門記述の出来が合否に大きく影響します。

 一方で、あくまで一次試験合格者を対象に専門記述答案が評定される国税専門官のような公務員試験では、面接にある程度自信のある受験生は、足きりラインである基準点を超える程度の答案が書けるようになることが取り敢えずの目標です。

 つまり、受ける公務員試験種によって対策の程度も異なる訳ですが、いずれにせよ、択一式用の知識のみではまず専門記述には太刀打ちできません。

 大学時代に専攻したなど、専門科目について論述できるレベルの学習経験のある受験生は別ですが、択一式の学習しかしていない状況で専門記述試験に臨むのは、全裸で戦場に飛び込むようなものです。

 深入りし過ぎると時間がいくらあっても足りないのが専門記述ですが、選択する科目と論点を絞ることで労力を抑え、合格者平均レベルの答案を書ける程度まではしっかり専門記述用の対策をしましょう。


◆お勧め参考書

○公務員試験論文答案集専門記述シリーズ(早稲田経営出版)


<対応科目>
  • 憲法
  • 行政法

 公務員試験の専門記述対策本はそもそもほとんど種類が存在せず、経済系科目を除く他の科目は事実上このシリーズでしか対策できません。といっても、現時点では憲法と行政法のみですが。

 以前当サイトでは、同じく早稲田経営出版による公務員試験予想問題集GUTS専門記述シリーズをお勧め問題集として紹介していましたが、発行された2006年以降改訂もなく、再版の見込みは薄いため、現在は利用をオススメできません。なによりGUTSシリーズはキーワードが間違えているなど誤植が多いため、利用者からの評判もカス同然いまひとつで、現在は科目によってはマグロの初セリ級に価格が高騰しているという異常ぶりのため、受験生としても選択から除外せざるを得ないでしょう。

 一方、ここで紹介している公務員試験論文答案集専門記述シリーズは、過去問の分析に基づく出題予想テーマが豊富に掲載されており、かつ各テーマの重要論点が網羅されていることから、本書を有効利用すれば専門記述は合格水準に達することができます。

 解説も詳しく、全テーマについて800字と1200字の答案例が掲載されているため、より実践的な学習が可能。専門記述が課される公務員試験受験生は必携の参考書といえます。

 また、経済学の記述対策本として、他に週刊住宅新聞社出版の「らくらくミクロ・マクロ経済学入門 記述・論文編と中央経済社出版の「試験攻略 新・経済学入門塾〈5〉論文マスター編 がありますが、国家一般地方上級レベルの受験では経済学入門塾論文マスター編は内容がやや高度となっているため、選ぶなららくらくの方をお勧めします。本書も非常に良書であり、専門記述が課される公務員試験を受けるのであれば、本書を使わざるをえないでしょう。




◆学習指針

 公務員試験専門記述の学習指針ですが、ここでは東京都専願のケースを想定しない前提で記述いたしますので、ご了承願います。

 学習開始時期については、択一式の学習が一通り終わってからが無難。択一式の学習によって基礎事項を頭に叩き込んでからの方が、記述対策もスムーズに進みます。

 また、専門記述対策によって択一式の知識が厚くなるという、相乗効果を狙うことができます。

 専門記述は、発想力や表現力はほとんど要求されないため、出題されそうな論点をひたすら覚えるという作業で、合格者平均ラインに達することができます。

 が、受験生の方々は、まず「どの科目を選択するか」で悩むかと思いますし、選択する科目を決めたとして、「出題可能性のある論点を確実に押さえ、正確に記憶する」という作業は、なかなか大変です。

 ということで、ポイント別に見てゆきます。

@どの科目を選択するか。

 まず選択する科目の選別ですが、3科目を選択しないといけない東京都を除けば、せいぜい2科目程度を用意するので精一杯かと思われます。

 そして、選択する科目ですが、こればっかりは受験生の得意不得意や受ける公務員試験種に応じて、自分で決定するしかないかと思います。というか、独学の受験生からすると、市販されている対策本の科目が限られていることもあり、選択肢は自ずと絞られてしまうわけですが。

 現状を見ると、専門記述を課するほぼ全ての公務員試験で出題される「憲法」を選択される受験生が多いようで、市販されている公務員試験専門記述論文対策用の本も憲法がメジャー。

 併願受験を考えた場合は、確かに併願が利く憲法を選択学習するというのは一つの有効策だとは思いますが、「テーマが出尽くされていて、出題予想しにくい」「近年は事例問題が出るなど、傾向が掴みにくい」「多くの受験生が選択するため、採点基準が厳しい可能性がある」「純粋に、論点が多い(60程度)」といった、憲法を選ぶデメリットが多いのも事実です。

 よって、よほど憲法に自信がある人以外は、憲法は選択しない方が無難です。

 そこで、公務員試験対策室としてのお勧め科目は、「経済学」です。

 ミクロ・マクロと範囲は広いですが、覚えないといけない出題されそうな論点はそれほど多くないし、図やグラフを描けば自然と記述すべき論点が見えてきます。さらに、論述するプロセスでまず間違いなく図やグラフを用いることになるので、解答用紙のスペースも確保できます。

 国税専門官を第一志望とする受験生は、会計学を選択する手もあります。

 会計学は、頻出論点がある程度決まっているため、出題テーマが他の科目に比べ予想しやすく、かつ国税専門官試験の必修である択一式の会計学の対策にもなるからです。会計学記述対策用の参考書が市販されている点も見逃せません。

 東京都を第一志望とする受験生は、3科目どころか、最低5科目程度は準備しておいた方がいいでしょう。

 5科目学習するとなると労力的にかなり大変なため、論点が少ない行政学などの行政系科目や、経済学を選ぶのであれば関連の深い財政学を選ぶなど、自ずと科目の選択岐は限られてくるかと思います。っつーか、独学では正直東京都の専門はキツイですね。市販の本が無さ過ぎです。Amazonのタブレット端末のKindleを持ってたら、素人さんが作成されたと思われるやや怪しげな記述論文対策本(データ)を購入できるようですが、内容は未検証なので現時点で当サイトとしては何ともいえませんね。(amazonで公務員試験 東京都 専門記述 とか東京都 記述模範集 で検索するとヒットします。ご利用は自己責任で。)

Aどの論点を学習するか。

 出題可能性のある全ての論点を押さえることが理想ですが、それには膨大な時間と労力がかかるため、ある程度ヤマを張ることになるのはやむを得ません。

 ヤマを張るには、受ける公務員試験種の過去の専門記述出題テーマを確認するしかありません。

 近年3年間ぐらいの出題テーマはまず出ないので、それ以前のテーマと今まで出題されたことのないテーマを確認して傾向を分析し、論点の少ない科目で10テーマ、多い科目で20テーマぐらいまで絞りましょう。

 なお、テーマが出尽くされている憲法は危ないので注意が必要です。人権分野か統治分野かでさんざん迷ったあげく各分野20テーマ程度まで絞った論点を必死で暗記し、「さぁどこからでもかかってきなさい」と意気込んで本試験に臨んで問題を見た瞬間、「事例問題だと!?」と見事に沈没するという、タイタニック号もかくやの悲惨だが有りそうなケースは、できれば避けたいところです。

B学習法まとめ

 選択する科目を決め、論点を絞ったら、お勧め参考書を使ってひたすら記憶です。

 キーワードや重要論点をマーカー等でチェックしながら答案例を読み、頭に叩き込みます。経済学や会計学の場合は、図や表を実際にノート等に書きながら覚えます。

 ただ、参考書の記述答案例は、論点はきちんと捉えられていますが、誤植があったり構成が微妙な部分が見受けられたりするので、丸覚えした答案例を本試験でそのまま書くのはお勧めできません。

 学習時はあくまで重要ポイントを押さえることに力を注ぎ、試験本番では課題に関係するキーワードや重要論点を問題用紙の余白等にザッと書き出し、それらをつなぎ合わせて答案を作成するという形式で臨むようにしましょう。

 また、これはあくまで参考ですが、法律系科目や行政系科目といった図表等を使わない科目で、参考書を読むだけではどうしても内容が頭に残りにくいと感じる受験生は、参考書の記述答案例を加工して、自分で模範解答を作成して覚えるという勉強法も一つの対策法です。他人の答案例を読んでいるだけではつまらないから頭に残りにくいのです。

 といっても、手書きは負担が大きいので、編集作業が楽なパソコンのワープロ機能を使って模範解答を打ち込みます。手書きの方が記憶に残りそうなイメージがありますが、手で書いても忘れるものは忘れます。

 何よりこの方法は、パソコンで打ち込むという作業が目的ではなく、自分で作成した模範解答をプリンタで出力して、それを何度も読み直して記憶するという作業に意義があります。

 当然ですが、自分で作った文章は他人が作った文章よりも覚えやすいし、参考書答案例を自分で加工して模範解答を作成するプロセスで、一度知識が整理されるという利点もあります。

 教養論文とは異なり択一式の対策にもなるので、時間はかかりますがこの作業はなかなか有効です。

 なお、「タイピングが恐ろしく遅いためパソコンでの作成は苦痛そのもの。手書きの方がまだマシ。」といった方や、「自分で解答作るなんて時間の無駄。マーカーでチェックしながら読んでたら自然に覚えてしまう。」といった方は、この話は無かったことにしてください

 しかし・・・東京都用に5科目用意するのは、マジで負担が半端じゃないですね。

 択一式の対策にもなると割り切って、根性で乗り切ってください(ニッコリ)。

 東京都の記述試験をクリアするぐらいのレベルにまで知識を昇華すれば、少なくとも専門試験に関しては、他の公務員試験でも周りの受験生に遅れを取ることはないかと思います。

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